会社を設計しよう

何のために起業するのか?

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「何のために起業するのか」と問われたときの答えには、『起業することによって、どう世の中のために役に立つのか?』といった内容が含まれていなければ、今の時代、会社を存続させることは難しいことかと思います。
たとえば、飲食業ならば『安くて安全な地元の食材を使ったメニューを中心に提供することによって、地元の地域の農業と関連産業の活性化を図り、地域の食文化とお客様の健康を守る』、建設業であるならば『お客様の日常生活を快適に過ごせる家づくりをサポートする』という答えになります。

経営理念の3要素

Mission どのように社会に役に立つのかを定めたもの
Vision 将来こうなりたいという展望
Value 会社の組織を構成するメンバーとしての基本的な考え方

どんな会社にするのか?

せっかく設立した会社を長年にわたって持続させるためには、起業家の『思い』が必要です。
その『思い』を『行動』のレベルに落とし込むためには『経営計画』が必要です。

会社の名前を決めよう!

会社の名前を付けるのは創業者の特権で自由に決めていいのですが、お客さまにとって分かりにくい名前は、避けた方がいいかと思います。
次の点を考慮に入れて検討してみてはいかがでしょうか?

  • 聞き取りやすいか?
  • 覚えやすいか?
  • 簡潔でよびやすいか?
  • 商品名はどうか?
  • 創業者の名前はどうか?
  • 事業内容そのものにしてはどうか?

事業を手掛ける所在地を決めよう!

立地とは簡単に言えば、お客さまが来てくれそうな度合いの条件のことです。よく「駅前一等立地」などという言い方をしますが、当然たくさんの人が集まる立地はお客さまが来てくれる確率が高まります。立地には、遠くからでも店が分かるか、ビルであればアプローチしやすい低層階か、入り口は狭くないかなどのチェックポイントがあります。
また、二等立地であっても個性があり、魅力的な商品・サービスを提供できれば、一度来てくれたお客さまは、繰り返し来てくれるはずです。できるだけ小資本で開業するために、立地よりも商品・サービス重視で勝負するのも一つの方法です。

商圏とは、そのお店を出す周辺にターゲットとなりそうな人がどれくらいいるかということです。ビジネス街に出店するのであれば平日昼間の人数、住宅街であればそこに住んでいる人達の数と質(ファミリー中心か学生中心かなど)が大切です。

出店候補地の選別に際し、より詳細で確かな情報を収集するためには、何度でも現地に足を運び、地域の特性や交通アクセス、金融機関や飲食店などの構成、街並みや周辺の環境、雰囲気などを確認することが不可欠です。

会社を設立する際には、定款に『本店の所在地』を定めなければなりません。
ただ番地や号まで具体的に記載しなくてもよく近くに引っ越した場合だと定款を変更する手間が省ける場合があります。

事業の目的を決めよう!

事業目的と言うのは、あなたが設立する会社が行うビジネスのことです。
会社というのは定款に定めてある目的以外の業務を行うことはできません。
事業目的を決める際に参考になるのは、総務省が定める日本標準産業分類で、これに沿ったものを目安にすれば分かりやすく書けます。
また定款に定める事業目的の数には制限はないため、当面の事業だけでなく、規模が大きくなった時に手掛けたい事業までを含めて記入しておくことをお勧めします。
個条書きで書いた後、『前各号に付帯する一切の業務』としておけば、広範囲に解釈してもらえ、将来定款をつくり直す必要がなくなります。

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資本金の額を決めよう!

資本金は、会社設立の基本となる資金です。
現在は会社法で資本金は1円でも起業することができますが、1円では現実的に何も購入できません。
では実際に起業するにあたって、どれくらいの資金が必要になるのでしょうか?
業種にもよりますが、目安として半年くらいのあいだ会社を運営するだけの資本金として、最低でも300~1,000万円が必要だと言われています。
この金額は以前の有限会社と株式会社の資本金の額にあたります。
また政府系の金融機関の創業資金を利用する際にも自己資本の2倍までしか借りれません。

出資者を募ろう!

会社を作ろうと企画をし、手続きを進めていく人を発起人といいます。
会社の運営は個人の金銭感覚と異なるところがあり、会社を経営するに当たり多かれ少なかれ借入金が無ければ成り立たないところがあります。
ただ借金に抵抗のある方は、まずは個人事業としてビジネスをスタートすることをお勧めします。

出資した人は必ずしも発起人になるわけではありませんが、多くの場合は出資者=発起人となり、これを発起設立と言います。
発起設立とは会社設立時に発行する株式の全部を発起人が引き受け、発起人以外からは株式を募集しない方法です。

ちなみに身内や知人以外の株主を募集して会社設立する方法を、募集設立と言います。

機関設計をして役員を決めよう!

機関とは、会社の意思決定や業務執行をする代表取締役、取締役、監査役、会計参与のことです。
「誰がどの役割を担って行くのかを決めていくことを機関設計と言います。
現在の会社法では監査役と会計参与の設置は任意となっており、自分一人が代表取締役となるだけで機関設計が終了します。

ただ取締役会を設置しない会社にはデメリットもあります。
それは出資者が複数いる場合、本来取締役会で決議できる事をわざわざ株主総会を招集して決めなければならない事です。
代表取締役である貴方自身にとって、敵対的な株主がいないと<思われるのであれば、取締役会を設置しない会社でもいいですが、反対にあなたの家族や親戚以外の人から出資を募っているようであれば、取締役会を設置した会社として機関設計していく方が無難です。

取締役会を置くかどうか決める

取締役会を置かない会社(原則) 取締役会を置く会社(例外)
機関設計の選択肢 監査役会の設置は任意 監査役か会計参与のいずれかの設置が必要
取締役の員数 制限なし(1人でも可) 3名以上
代表取締役の選定 任意 必要
業務執行権限 各取締役 代表取締役および業務執行取締役
譲渡制限株式の承認機関 株主総会 取締役会、ただし定款で株主総会にするのも可
取締役の競合取引の承認機関 株主総会 取締役会
株主総会の権限 法定事項のほか、会社の一切の事項について決議できる 法定事項のほか、定款で定めた事項に限り決議できる
株主総会の招集通知の発出期限 定款をもって1週間からさらに短縮可能 公開会社では2週間前、非公開会社では1週間前
定時総会の招集通知の際における計算書類の添付 不要 必要

取締役会は1人か複数か、株主は身内のみか第三者も含むのかで考える

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事業年度を決めよう!

事業年度とは、株式会社で決算承認を得るために年度を区切った期間の事です。
多くの会社では4月を事業年度の期首に設定して、3月を期末とする1年間と定めていて、その3月には1年間の会社の成績を決算書という形にまとめ、その後、株主に発表します。

ただ事業年度を決める際に、しばしば判断の基準とされるのが消費税対策です。
消費税は資本金が1千万円以下の会社を設立する場合、2年間支払いが免除されます。

次に事業年度を売り上げが一番多い月を期首に設定するという方法もあります。
売り上げが多い月が期末に設定されていると、経費の調整が難しくなります。
経費の調整は節税対策にもつながり、小さな会社の場合、経費の調整の幅でかなりの場合を占めるのが役員報酬(社長等の給料)です。
売り上げが一番多い月というのは、変動幅が大きいと事でもありますから、早い段階で役員報酬を変更できるという調整が可能になります。
また今年は儲かったから、広告宣伝費を多めに使おうというような経営判断を下す場合でも期末になってしまうとできることも限られてきますし、税務署からも税金逃れではないかと疑いをかけられかねません。

会社の印鑑をつくろう!

使用目的別に4種類の印鑑を用意しましょう。

種類 概要
代表者印
(丸印)
法務局に届けを出して登録すべき印鑑であるため法人実印とも呼びます
銀行印
(横文字)
経理担当者などに頻繁に持たせることがあるため、代表者印とは別に用意しておきます
社印
(角印)
代表者印を押すほど重要でない書類の押印に使用し、主に見積書、請求書、領収書に使います
社用ゴム印
(組合印)
各種契約書の署名欄や小切手や手形の振り出し欄などに、自筆で書くのを省略できる便利な印鑑です
本店所在地、電話&FAX、商号、代表者名などが、それぞれセパレート式になっているタイプを選べば、組み替えて使用できて便利です

個人の印鑑証明書を用意しよう!

会社を設立するための手続き書類には、発起人各人の記名や押印が必要であり、各個人の印鑑証明が必要になります。
これは実印ということになりますから、各個人で市町村役場で印鑑登録が必要となります。

各個人の印鑑証明書が必要となるのは、次の各場面となります。

  • 定款の認証を受けるときに、発起人について各自1通(取締役会設置会社)
  • 設立登記申請の際に、代表取締役につい1通(取締役会非設置会社)
  • 設立登記申請の際に、発起人でない取締役について1通

発起人それぞれの印鑑証明書は、番地や号の住所まで書かれてありますので、面倒かもしれませんが、定款に住所を記入する際に参考になるので、コピーを取っておき保管しておきます。
印鑑証明書には有効期限があり、定款認証時には提出日から6カ月以内のもの、設立登記では3ヶ月以内のものが必要です。

設立費用を用意しよう!

資本金としては1円でも会社設立できますが、300~1,000万円くらいと考えましょう。
それ以外の設立費用は下記の表を参考にして下さい。

項目 費用
定款の印紙 4万円(電子定款の場合は不要)
公証人認証手数料 5万円
定款の謄本交付手数料 約2,000円(250円/頁)
登録免許税 約15万円、または資本金の額の0.7%のうち高い方
行政書士への報酬 約10万円(ご自身でされる場合は不要です)

設立費用だけも20.2万円以上が必要となります。